【2025年9月28日】30分以内の部コンペティション
- nantokaff
- 12 分前
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映画祭最終日は、30分以内の部コンペティションから始まりました。今年のコンペティション参加作品は9本。そしてコンペ対象外の特別上映作品2本の計11本が上映されました。
審査員には俳優の津田寛治さんをはじめ、映画監督の横浜聡子さん、深谷シネマ名誉館長竹石研二さんの3名。上映後の質疑応答では、9作品の監督や関係者との真剣な対話が行われました。
最初のブロックでは、乙木勇人監督の『ラストオーダー』、藤森圭太郎監督の『川面に聴く』、乾拓歩監督の『アナログ坊やとおたずね老婆』、佐飛実弥監督の『あわい』の4作品を上映。上映後に登壇した監督たちに、審査員からの熱い質問が飛び交いました。
津田さんは、10分間1ショットの撮影に挑戦した『ラストオーダー』の乙木監督から「撮影場所が3時間しか使えなかったので、準備を含めて3テイクで撮りきりました」との回答にかなり驚かれていました。
横浜さんは、『川面に聴く』の高校生たちに熱いエールを送りつつ、地元の高校生たちとのワークショップ作品であることに感心。
かつて児童映画の製作をしてきた竹石さんは、『アナログ坊やとおたずね老婆』の少年と老婆の心の交流に心惹かれ、
横浜さんは、『あわい』のセリフも少なく必要最低限のもので構成した演出を高く評価していました。
次のブロックでは、鬼村悠希監督の『キッチンオブドラゴン 風の天龍炒飯』と新玉夏子監督の『メゾン平凡』という奇想天外なアクション・エンターティンメントの2作を上映。
奇抜な発想の2作にやや面食らった感じの審査員2人に対し、これぞエンターティンメントとして楽しんだ竹石さんの「続編に期待します」が会場を沸かしていました。
最後のブロックは、長棟航平監督の『Lelaina』、須藤彰監督の『ヨミノヒカリ』、八木橋ゆり監督の『俺が死んだあとのこと』の3作を上映。
竹石さんは、奔放な女性に振り回される年下男子の成長を描いた『Lelaina』のフィルムっぽい質感を賞賛。『ヨミノヒカリ』にも8ミリフィルムが使われたりしていて、フィルムとデジタルの融合が素晴らしく、デジタル映像の技術的な成熟に審査員全員が感嘆していました。
幽霊となった父親と娘との交歓を描いた『俺が死んだあとのこと』では、幽霊を演じた俳優の存在感が圧倒的で、作品を際立たせていました。八木橋監督によれば「死をテーマにしているので、重くならないようコミカルな演技でバランスを取った」とのことでした。
全9作品の上映が終了し、審査員一堂が審査を行っている間に、特別上映作品『あの頃』と『国境公民館』の2作を上映。
『あの頃』は戸田遥太監督が県立松山高校在学中に映像制作部の同級生と共に制作した作品で、些細なきっかけで出会ったクラスメート同士が、友情を育んでいく姿と将来の進路に悩む姿を描いた青春映画で、泥団子というユニークな小道具の使い方に感心させられる作品でした。
一方『国境公民館』は、昨年の当映画祭でも公開された南浦和公民館ショートフィルム制作講座の受講生たちの最新作で、青浦和と桃浦和に分断された世界で、国境と化した公民館の警備員たちの葛藤を描いた近未来SF。上映終了後に登壇した関係者の中に監督が4人もいたのが印象的でした。
11作品の上映終了後に、観客賞の発表が行われました。
受賞したのは八木橋ゆかり監督の『俺が死んだあとのこと』でした。プレゼンターはこの賞の副賞をご提供頂いた“宮崎串間 八幡然”の島田義仁さん。
八木橋監督「短編映画、特に自主映画は観てもらう機会が少ない中、こうして実際に観にきていただい方から選ばれた観客賞は、一番嬉しい賞だと思います」
コンペティションの審査が終了し、俳優賞が津田さんから発表されました。
俳優賞一人目は『ラスト・オーダー』に主演した竹石悟朗さんでした。
津田「竹石さんは、背面になっている方々の表情を想像させる芝居をちゃんとやっていられる。主役である自分が立つ芝居ばかりではなく、リアクション芝居をしながら、自分の過去を語るウェットなお芝居もやり過ぎず、常に笑顔を絶やさない人柄のでた演技が素晴らしかったです」
俳優賞二人目は『川面に聴く』に主演した小林桃子さんでした。
津田「小林さんは、リアル女子高生だとばかり思ってたんですけど、オーディションで選ばれた女優さんだったんですね。特にラストのゴルフ場で、あっけらかんといろんな職業を語るシーンでは、観客も置いてけぼりにしないで和ませる自然体の演技が素晴らしかったです」
準グランプリは、佐飛実弥監督の『あわい』でした。
横浜「審査員3人の意見が割れ、話し合いで決めました。映画というのは時間を描けるものなので、回想形式などで過去を描くのはよくあるのですが、佐飛監督は現在の時間の中で過去を想起させる表現が秀逸で、現在の彼女たち3人の姿を見ることで、彼女たちの過去や未来への決意が見えてくる表現に惹かれました」
グランプリは、須藤彰監督の『ヨミノヒカリ』でした。
竹石「この作品は3人一致で選ばれました。映画というは20世紀に生まれ、人間が人間に対して創造した総合芸術だと言われています。現在でも映画が皆さんの手に届くまでに、多くの方たちのいろんな努力と共同の力で成り立ち、多くの方に観られることで完結します。そんな中で新しい映画人が映画祭からデビューするのを嬉しく思います」
須藤監督の「正直いろいろと考えるところがあって、映画を辞めようかなって思っていました。今回参加された監督や俳優の皆さんも、一度はそんなことを考えたことがあると思います。映画を芸術としてではなく、普段アートや芸術に無縁の人にほんの少しでも心に残るものあればいいなと。中々難しいことですが、もう一回頑張ってみようかなと思っています」といった受賞コメントが印象的でした。
コンペティション全行程が終了し、審査員3人から総評をいただき、実行委員会会長:栗原俊明より閉会の宣言をもって、映画祭のプログラムは全て終了。その後、ゲスト、来場者、スタッフ、サポーター全員で記念写真を撮影し、第5回SAITAMAなんとか映画が無事閉幕いたしました。





























































































































